但馬牛

但馬牛とは?神戸牛の元であるサシが甘い但馬牛の魅力を解説します

高級牛と言えば神戸牛や飛騨牛、松坂牛などが有名ですが、兵庫県の誇る特産品である但馬牛(たじまうし)も、その美味しさには定評があります。
そんな但馬牛は松阪牛や神戸牛などの有名なブランド和牛の素牛としても知られており、人気が高まっている銘柄です。
こちらの記事では、但馬牛の概要や魅力、神戸牛との違い、おすすめの食べ方などについて解説していきます。

但馬牛とは?

但馬牛とは?

但馬牛(たじまうし)とは、兵庫県産の黒毛和種のことです。
但馬牛(たじまうし)は兵庫県の北部に位置する但馬地方の山あいで、恵まれた自然環境にはぐくまれながら、長年にわたり他県産牛との交配をさけながら改良を重ね、つくり出されました。

この但馬牛(たじまうし)の中でも、神戸肉流通推進協議会による基準を満たして生産され、同協議会が定める格付け基準を満たした牛肉を、但馬牛(たじまぎゅう)と言います。
生産基準としては

  • 出生地が兵庫県内
  • 兵庫県の県有種オス牛の精子用いて歴代に亘り交配したウシ
  • 生後28か月以上から60か月以下

などが挙げられます。

格付け基準では「歩留(ぶどまり)等級がAまたはBの等級」を満たす必要があります。
こうした厳しい基準を満たした但馬牛(たじまうし)の牛肉だけが、「但馬牛(たじまぎゅう)」「但馬ビーフ」「TAJIMA BEEF」と表記することが許される訳です。

歩留等級とは

歩留等級とは牛の生体から内臓や骨、皮などを取り除いた枝肉から得られる可食部分の割合を評価したものです。
AからCの3段階で評価され、Aの方が可食部分が標準より多く、Cは標準より少なめであることを意味します。
もう1つ「肉質等級」という基準もありますが、こちらは脂肪交雑、脂肪の色沢と質、色沢、しまりときめの4項目から牛肉の品質の高さについてランク付けしたものです。

肉質等級は1から5の5段階で評価され、5が品質が高く、1が劣ることを表しています。
焼肉店や通販サイトなどで見かける牛肉のランクを示す「A5」などの表記は、歩留等級と肉質等級を組み合わせたものです。
例えばA5ランクなら、歩留等級A、肉質等級5の最高ランクの肉ということになります。

但馬牛の特徴

但馬牛の特徴

但馬牛の特徴の1つが資質の良さです。
但馬牛は被毛が細くて柔らかい、皮膚が薄くて柔らかい、小柄で骨が細いなどの身体的な特徴を持っています。
これらの身体的な特徴は、優れた黒毛和牛の条件となる資質と言われています。

また、優れた資質を持つだけでなく、良い資質を受け継いでいく強力な遺伝力を持ち合わせているのも特徴です。
その力強い遺伝力によって国内の肉用牛の改良に広く使われています。
そんな但馬牛の肉質は、柔らかな肉質と、赤身と脂のバランスの良さが特徴です。

特に「サシ」に関しては、キメの細かい「小ザシ」が入りやすいといわれています。

神戸牛と但馬牛の違いは?

但馬牛と同じ、兵庫県産の牛肉としては神戸牛も有名です。では但馬牛と神戸牛にはどのような違いがあるのでしょうか。

神戸牛と但馬牛は同じ牛の肉

但馬牛(たじまぎゅう)は、一定の基準を満たした但馬牛(たじまうし)の牛肉に認められる名称です。
そして神戸牛は、但馬牛(たじまぎゅう)の中でも更に厳しい基準を突破した牛肉にのみ与えられるブランド名です。
つまり、但馬牛(たじまぎゅう)も神戸牛(こうべぎゅう)も同じ但馬牛(たじまうし)の牛肉ということになります。

また、神戸牛(こうべうし)という肉牛は存在しません。
神戸牛と但馬牛も同じ但馬牛(たじまうし)の肉ですが、審査基準に大きな違いがあるわけです。

神戸牛の審査基準

元々、厳しい審査基準がある但馬牛(たじまぎゅう)に対し、さらに基準を増やして審査に合格した牛肉だけが神戸牛と認められます。
その審査基準は世界一厳しいとも言われるほど。
そんな神戸牛の審査基準としては

  • 但馬牛であること
  • 未経産あるいは去勢した牛であること
  • 肉質等級が4以上
  • 枝肉の総重量が基準内であること
  • BMS値がNO6以上

などが挙げられます。
これらの厳しい基準をクリアしているため、神戸牛は日本三大和牛の一つとして、世界でも高い評価を得ているのです。
ちなみにBMSというのは、ビーフ・マーブリング・スタンダードの略で赤身の肉にどれだけサシ(霜降り)が入っているかを示す指標です。
NO1〜12まであり12が最高ランクとなります。

神戸牛と但馬牛の味の違い

神戸牛も但馬牛も同じ但馬牛(たじまうし)の肉なので、味は似ている部分が多いです。
例えば肉質はどちらも柔らかく、赤身と脂のバランスが取れています。
大きな違いはサシの入り具合です。

神戸牛はサシの入り具合を示す、BMS値が高い肉が多いため、サシの入り方がとても細かい傾向にあります。
サシは牛肉の赤身部分の中に網の目状に入っている脂肪のことを指すわけですが、この脂肪が溶け出すことで口溶けの良さや、まろやかな舌触りに繋がる訳です。

特に神戸牛の脂肪は融点が低いため、口に入れた瞬間に脂が溶け出します。
これにより溶けるような食感を体感できる訳です。

但馬牛は黒毛和牛のルーツ?

但馬牛は黒毛和牛のルーツ?

和牛には、黒毛和種・褐毛和種・無角和種・日本短角種の4品種が存在し、日本全国で170万頭ほどの和牛が飼育されています。
中でも黒毛和種は170万頭の大半を占めるメジャーな品種です。

そんな黒毛和牛のルーツは但馬牛だと言われているのをご存知でしょうか。
平成24年「全国和牛登録協会」の調査で、日本の黒毛和種の99.9%が兵庫県香美町小代(おじろ)区で産まれた「田尻号(たじりごう)」という一頭の但馬牛の子孫、つまりは但馬牛の血統であることが判明したのです。

名牡牛「田尻号」とは

日本では、明治時代になってから牛肉を食べることが文明開化の象徴と考えられ、牛肉の食文化が広まりました。
そして小柄な日本の牛を外国の牛のように大柄な牛にしようと、外国から様々な品種が輸入されて日本在来種の和牛との交配が行われました。

しかし、この取り組みは失敗し、気性が荒くなる、食欲は旺盛でも運動しない、肉質・性質ともに落ちてしまうなど、残念な結果に終わるのです。
加えて、この品種改良の末、国内では純血の黒毛和種が激減しており、絶滅の危機に直面していました。

そんな中、兵庫の奥深い小代(おじろ)区と呼ばれる小さな集落に、外国種との交配を逃れた純血の但馬牛が4頭残っていたのです。
そしてここで生まれた、肉質のよい強い遺伝子をもった但馬牛が「田尻号」です。

田尻号は小代の畜産農家である田尻松蔵宅で生まれました。
田尻号の名も、田尻松蔵に由来すると言われています。

田尻号は特別体格のよい牛ではありませんでしたが、田尻松蔵氏の牛を見る眼と日々の努力によって、生まれて半年で美方郡の種牡牛候補として認められました。
田尻号が種牡牛として使われていたのは約12年間半ですが、この間に約1500頭もの子孫を残しました。
人工授精の技術がない時代に、これだけ多くの子孫を残すのは驚異的です。

ブランド牛と但馬牛の関係性

日本の黒毛和種の99.9%には但馬牛の血統が受け継がれています。
ただし、但馬牛が黒毛和牛のルーツと言われる理由はもう1つあります。
それが素牛としての高い評価です。

素牛とは将来肉牛として育てる子牛のことで、この素牛としても但馬牛は高く評価されています。
例えば、神戸牛と同じく日本三大和牛に数えられる「松阪牛」「近江牛」にも兵庫県産の但馬牛が使われています。また、飛騨牛や前沢牛など全国の名だたるブランド牛も但馬牛を導入し、かけ合わせて作り上げたものです。

このような有名ブランド和牛との関係の深さも、黒毛和牛のルーツと言われる由縁です。

但馬牛のおすすめの食べ方

柔らかい肉質、赤身と脂のバランスの良さ、キメの細かいサシが特徴の但馬牛ですが、どのように食べるのが良いのでしょうか。
但馬牛のおすすめの食べ方をいくつか紹介します。

但馬牛のステーキ

但馬牛のステーキ

まず、おすすめしたいのが但馬牛のステーキです。
但馬牛の柔らかい肉質、サシの甘みを堪能するならステーキが最適です。
焼き加減はレア~ミディアムが良いでしょう。

ただし、ステーキはシンプルな料理なので調理の仕方次第で美味しさが左右されます。
まず、大事なのは焼く30分くらい前に冷蔵庫から取り出し常温に戻しておくことです。
冷蔵庫から出してすぐに焼くと、内部温度が上がらず表面だけが加熱され焦げてしまいます。

この後、塩コショウで下味を付ける訳ですが、焼く直前にふりましょう。
塩をふって長時間放置するとお肉の水分が逃げてしまうので注意が必要です。
下ごしらえが済んだら、焼きに入ります。

まず、フライパンは煙が出る直前くらいまでよく熱し、牛脂を入れます。
強火のまま肉を入れ、片面を約30秒焼いて、肉の表面がこんがりと焼けたら裏返しましょう。
弱火にして約1分焼いたら完成です。

この弱火で焼く時間を調整することで、焼き加減も調整できます。
レアなら約1分、ミディアムは約2分、ウェルダンは2分30秒から3分が目安です。

但馬牛のすき焼き

但馬牛のすき焼き

もう1つ、おすすめしたい食べ方が但馬牛のすき焼きです。
赤身と脂のバランスの良さが魅力の但馬牛は、しっかりとした赤身の旨みがあるうえに、肉質も柔らかくすき焼きにも最適です。
そんなすき焼きを作る際のポイントですが、まずステーキと同じように冷蔵庫から取り出し常温に戻しましょう。

もう1つのポイントはすき焼きに使う肉の部位です。
基本的には但馬牛の中でも肩ロースやリブロースを使うのがおすすめです。
これらはサシと赤身のバランスが良いので赤身の旨味、脂の甘み、どちらも楽しめます。

もも肉もすき焼きに使うことは可能ですが、脂身が少なく赤身が多いため、煮込み時間が長くなると硬くなるので注意しましょう。

但馬牛は赤身と脂のバランスの良さが魅力

但馬牛の特徴、神戸牛の元であるサシが甘い但馬牛の魅力を紹介しました。
黒毛和牛のルーツとなった品種であり、神戸牛の元にもなっている但馬牛。

柔らかい肉質、赤身と脂のバランスの良さが魅力なので、ステーキやすき焼きがおすすめです。但馬牛が気になる方は通販で取り寄せることも可能なので、ぜひ試してみてはいかがでしょうか。

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