神子畑選鉱場跡とは?
神子畑選鉱場跡は平成19年には経済産業省が近代化産業遺跡として認定した神子畑鉱山エリアの遺産のひとつです。
大正8年に明廷鉱山で採鉱された鉱石の選鉱場となり、最盛期にはなんと3,000人が働いていました。
神子畑選鉱場は山の斜面を利用してひな壇状に22階層あり、幅110m、長さ170m、高低差75mと大規模。
昭和9年以降幾度かの拡張工事が行われ、その規模・産出量ともに「東洋一」と謡われる選鉱場となります。
明廷鉱山から鉄道で運ばれた鉱石は主にスズでした。
しかし、明廷鉱山は多品種鉱山で銅・亜鉛なども含まれていたため、鉱石の状態や種類に合わせた選鉱作業を行っていました。
この神子畑の選鉱技術には高い評価があり、特に「比重選鉱技術」は海外からも視察団が訪れるほど。
また、24時間稼働しており、夜中になると選鉱場が光る姿が印象的で不夜城と言われていたそうです。
しかしながら、昭和62年に円高の急激な進行で競争力を失った明廷鉱山の閉山とともに神子畑選鉱場も操業を停止し、閉鎖。
その後も建物は残っていましたが、平成16年に老朽化した建物が取り壊されました。
よって現在は鉄筋コンクリートの基礎構造物と、選鉱場の上下を結んでいたインクライン(ケーブルカー)の跡が残され、現在は史跡公園「鉱石の道神子畑ステイション」として整備されています。
神子畑選鉱場は明廷鉱山の作業行程のなかで活躍しました。
鉱山での作業行程は大きく4つに分別されます。
1つ目は探鉱です。
この作業では鉱山を開発するために鉱床を発見・調査を行います。
この作業で形や品位、埋蔵量などの調査をします。
2つ目は採鉱です。
この作業は鉱山から鉱石を採掘します。
採鉱には坑内掘りと露天掘りの二通りありますが、多くの場合には鉱物が地表に露頭している場合や地表から浅い場所にまとまった鉱床がある時に適している露天掘りを採用します。
3つ目は選鉱です。
神子畑選鉱場ではこの選鉱という過程が行われていました。
この作業では採鉱した鉱石を必要・不必要によって分別していきます。
建物の上層より破砕→比重選鉱→浮遊選鉱→脱水などを経て選鉱完了です。
4つ目は製錬です。
この作業では選鉱後に製錬施設に運ばれた不純物の多い鉱石から高純度の目的金属を取り出します。
神子畑選鉱場で選鉱された鉱石は金属別に全国の製錬所に運ばれます。
スズは生野製錬所、銅は直島製錬所、亜鉛は秋田製錬所に送られました。
この4つの工程を経て鉱石を選鉱していました。
住所:〒679-3453 兵庫県朝来市佐嚢1824-1 入場料:無料 営業時間:いつでも見学可能 休館日:なし 見学所要時間:ガイド付きだと約1時間半
近代化産業遺跡のほかのエリア
近代化産業遺跡に認定されたエリアには神子畑鉱山のほかに、生野鉱山と明廷鉱山があります。
生野鉱山には1,200年前の銀発見から昭和48年の閉山に至る歴史を伝える史跡生野銀山が文化遺産としてあります。
坑道内では約1キロにわたり明治以降の近代的坑道と江戸時代以前の手堀の跡を同時に見学できます。
明廷鉱山はかつて日本一のスズ鉱山として栄えました。
坑道の一部を案内ガイドの説明を聞きながら見学することができます。
ここからは神子畑選鉱場跡周辺の関連歴史施設をご紹介します。
1.一円電車
明廷鉱山で採掘された鉱石を神子畑選鉱上に運ぶための電車です。
昭和20年から昭和60年まで鉱山従業員の通勤電車として運行されていました。
正式名称は明神電車と言いますが、乗車料金が1円なので「一円電車」の愛称で親しまれていました。
明神電車として使われた鉱山車両は明廷鉱山、神子畑鉱山、生野鉱山にそれぞれ保存・展示されています。
そのなかの一つである「くろがね号」は現在も電気機関車を連結して動かしており、体験乗車会が年に15回ほど行われています。
興味がある方は是非乗車してみてはいかがでしょうか?
一円電車体験乗車会
場所:兵庫県養父市大屋町明廷1184
入場料:大人(高校生以下) 300円
小人(中学生以下) 1円
営業時間:午前10時から午後3時まで
体験実施日:こちらを参照ください↓
http://www.akenobe-kozan.com/2023/03/25/%e4%b8%80%e5%86%86%e9%9b%bb%e8%bb%8a%e3%81%ab%e3%81%ae%e3%82%8d%e3%81%86%ef%bc%81%ef%bc%92%ef%bc%90%ef%bc%92%ef%bc%93%ef%bc%88%e4%ba%88%e5%91%8a%e7%b7%a8%ef%bc%89/
電話番号:079-668-0258
2.ムーセ旧居(旧神子畑鉱山事務舎)
生野鉱山開発に貢献したフランス人技師・ムーセの元住居。
明治20年に神子畑に移築され、事務舎として利用されました。
建物はコロニアルスタイル(植民地様式)と呼ばれる特徴を持ち、七面四方の四周にはベランダをめぐらし、外壁の四隅には石を積み上げたように見せるコーナー・ストーンの技法が使われています。
現在は「ムーセハウス写真館」として公開されています。
場所:兵庫県朝来市佐嚢1826-1 入場料:無料 営業時間:10:00-17:00 休館日:毎週水曜日、年末年始 電話番号:079-677-1717
3.鉱石の道神子畑交流館「神選」
2020年に新しい鉱石の道の交流拠点として鉱石の神子畑交流館「神選」がオープン。
昭和50年代頃の神子畑周辺を再現したジオラマや、明治27年頃の神子畑山神宮の神輿(皇室財産の証である「菊の紋章」が入り!)などを間近で見学することができます。
神子畑選鉱場オリジナルグッズとしてTシャツやクリアファイルなどを販売しているお土産ショップも併設しているので、お土産もぜひここでお買い求めください。
場所:兵庫県朝来市佐嚢1842-1 入場料:無料 営業時間:10:00-17:00 休館日:毎週水曜日、年末年始 電話番号:079-666-8002
4.シックナー
液体中に混ざる固体粒子を重力下で沈降させることによりできるだけ濃縮し、引き続きろ過や感想などの操作を容易にするための装置のことをいいます。
神子畑選鉱場跡のシックナーは約16メートルの他に、約30メートルのものがあります。
普段は立ち入り禁止ですが、特別ガイド付きツアーでは入ることができるときも!
中には当時使用していた機械などがそのまま残されています。
タイミングが合えばぜひ見学に行ってみてください。
5.神子畑鋳鉄橋
神子畑鉱山で採鉱された鉱石を生野の精錬所へ運ぶためにつくられた「鉱石の道」にかけられた5本の鋳鉄橋のひとつ。
明治18年に架橋され、鋳鉄製の橋梁としては日本最古の橋であり、鉄橋としても日本で3番目の古さを誇ります。
国の重要文化財や日本遺産の構成資産にもなっています。
場所:兵庫県朝来市佐嚢宇水1637-7から1645-3まで
6.羽渕鋳鉄橋
こちらも神子畑鋳鉄橋と同じく「鉱石の道」建設時に作られた5本の鋳鉄橋のひとつ。
橋長18.15m、幅員3.175mで「羽渕のめがね橋」の愛称で親しまれている美しい様式の鋳鉄製二連アーチ橋はここでしか見られません。
明治22年に洪水のため流された後、さまざまな補修が行われ、最終的に平成7年に架橋時の姿に復元し現在の場所へと移設されました。
場所:兵庫県朝来市羽渕宇柳16-1宇田中212-4から宇中筋137-1
7.竹田城跡と城下町
竹田城跡は標高353.7mの山頂に位置する国指定重要文化財です。
雲海に浮かんでいるかのように見える幻想的な姿は「天空の城」と呼ばれ、人気の観光スポットです。
「竹田城跡」について、下記記事で詳しく解説しているのでぜひご覧ください。
>「天空の城」と呼ばれる「竹田城跡」周辺の観光コースをご紹介します。
見学の後はぜひ生野高原オーベルジュKASSEL(カッセル)へ!
神子畑選鉱場跡を見学した後は車で30分の生野高原オーベルジュKASSEL(カッセル)でゆっくり体を休めるのはいかがでしょうか?
生野高原オーベルジュKASSEL(カッセル)は但馬牛をはじめ地場産の食材を中心に使用したお料理を提供しています。
また、お部屋もこの春にリニューアル。窓から見える星空は絶景ですので、お時間がある方はぜひ宿泊でお楽しみください。