岡山県発祥の備前焼。
名前は聞いたことがあるけど、どのような特徴があるのかはわからないという人もいるのではないでしょうか?
そこで今回は備前焼の特徴をはじめその種類や歴史、お手入れ方法まで徹底解説していきます!
備前焼の特徴とは?
備前焼は素焼きの陶磁器の表面に釉薬という薬品を一切使用せず絵付けもしない、土味がよくあらわれるシンプルな焼き物です。
釉薬を使用しないことで備前焼独特の光沢がなく素朴な印象の備前焼が出来上がります。
備前焼の原土は伊部周辺の地下にある粘土層「干寄(ひよせ)」を使用。
作家や作品によって山土や黒土を混ぜ合わせて陶土を作り上げます。
その陶土を1200-1300℃の高温で7日-12日ほど昼夜かけてじっくり焼き固めます。
じっくり焼くために焼釜に火が入っている間は、作家は交代で火を見守り続けます。
そして、備前焼の最大の特徴は窯変(ようへん)です。
焼成時の窯の中の状態によって、焼き物の色や表面が変化します。
このように焼き上げ方法で見せる景色が変わる備前焼は「土と炎の芸術」と言われます。
備前焼の使い始めは表面の微細な凹凸により肌触りがザラザラ。
しかし、長く使い込むことで凹凸の角がとれて肌触りが良くなります。
その過程を楽しめるのも備前焼ならではです。
窯変(ようへん)の種類
先ほどもご紹介した備前焼の最大の特徴、窯変。
ここでは窯変の種類や焼き方をご紹介します。
1.緋襷
緋襷(ひだすき)は作品の表面が他のものに触れてくっつくのを防ぐためにワラを間に挟んだり巻いたりしてサヤに入れて焼いたものです。
直接炎や肺に当たらなかった表面は薄茶色に。
ワラが当たった場所はワラの成分と粘土の鉄分が化学反応を起こし緋色の線が現れます。
それが赤い襷をかけたようだったため、緋襷と呼ばれるようになりました。
最近では電気窯で焼かれたりもするようです。
2.黒備前
古備前の時代に焼かれた備前焼。
伊部手と呼ばれる技法を用いて他の窯変とは少し違った質感をもちます。
成型後に鉄分を多く含んだ土を表面に塗り焼き上げることで、表面の土が速く溶け出して釉薬のような働きをします。
作家ごとの独特の風合いが出るのが特徴です。
3.胡麻
松割木の灰が焼成中に作品に付着し、胡麻を振りかけたような状態になった模様。
作品の多くは灰が多くかかる棚の上に置かれ、降りかかった灰が熱で溶けて流れた状態のものを「玉だれ」と言います。
胡麻の色は青・黄・黒・茶・白と多彩。
その色は窯の形状や焼成方法、薪の種類などで変わると考えられています。
今では、人為的に胡麻を出すために灰を焼成前に作品に着けて焼くこともできるようになりました。
4.桟切り
桟切り(さんぎり)は窯の部屋同士をつなぐ穴周辺に置かれた作品が灰などに埋もれてできる模様。
白・青・黄色などの色変わりコントラストが付きます。
近代では自然桟切りのほかに人為的に桟切りを出すために木炭の化学作用を応用。
窯焚きを止める直前に大量の木炭を投げ入れ、桟切りをつくる炭桟切りという方法も行われています。
5.青備前
緋襷と同じようにワラを間にはさんだりまいたりしてできる模様と美しい青が特徴。
焼き上げのときに下の方に位置し、灰に完全に埋もれた状態になった酸欠状態のところは水色に近い青に。
少し酸素が入ると赤みを帯びた赤色になり模様部分は金色に。
温度調節が非常に難しいので、なかなか作られません。
もし青備前で好みの色を見かけたら買っておかないとその色に出会える保証はないので、その出会いを大切にしてください。
備前焼の歴史
日本を代表する六古窯の一つに数えられている備前焼。
備前焼の歴史は古墳時代まで遡ります。
その時代から須恵器の生成を営んでいた陶工たちが、平安時代から鎌倉時代にかけてより実用的で耐久性を持つ日用雑器の生産を始めました。
それが備前焼の誕生の時代と言われています。
備前焼の渋い焼き上がりは時代とともに評価され数々の名品が焼かれました。
現代でもその魅力を受け継ぐべく、300人余りの作家・陶工たちが素晴らしい作品を数多く世に送り出しています。
備前焼のお手入れ方法
まず、使い始めは中性洗剤を使って軽く洗います。
使用直前に水に浸した後、軽くタオルで押し拭きするとより色鮮やかさやしっとりとした艶を楽しめます。
使用後はしっかりと中性洗剤で洗ったあと、完全に乾かしてからしまいましょう。
もし使っているうちに茶渋やコーヒーのシミなどがついてしまった場合にはごく薄めた漂白剤で綺麗にすることができます。
とくに梅雨時期はカビやすくなるので、十分に乾燥させて箱などにしまうとより長持ちします。
また、ほとんどの食器が電子レンジのあたため程度なら使用可能。
不安ならば一度大きなお鍋でゆっくり温度を上げて煮沸すると安心でしょう。
しかし、オーブンは破損の可能性があるので使用しないでください。
備前焼で料理やお酒をおいしく楽しめる理由
「備前焼で飲むとよりおいしい」「備前焼で料理を食べると取りやすくおいしい」と聞いたことはありませんか?
実はその「おいしい」にはちゃんと理由があるんです!
まず、備前焼の器の内部には微細な気孔があり通気性に優れています。
そのため飲み物の香りが立ちやすく、まろやかな味になります。
特に、ビールの泡の寿命が長引くことから香りを逃さないので長時間おいしく召し上がりいただけます。
また、ウイスキーやブランデー、ワイン、日本酒などのアルコール類は風味が一段と引き出されさらにおいしくお召し上がりいただけます。
また、備前焼の食器は水分の蒸発力が弱いので、料理の感想を防ぎ、新鮮さを保ってくれます。
食器に小さな凹凸が多いため食べ物が取りやすくなるのもポイント。
このように備前焼のおいしいにはしっかりとした科学的根拠があるんです。
備前焼が欲しくなったら
備前焼は通販販売か産地である岡山県伊部地区で購入することができます。
通販販売はそれぞれの蔵ごとのHPで購入可能なので要チェック。
産地の伊部地区はJR伊部駅からのアクセスが便利。
伊部駅周辺には窯元や陶芸展が集中しているので気軽に行くことができるでしょう。
また、10月の第3土曜・日曜には伊部駅周辺で「備前焼まつり」が開催されます。
備前焼まつりでは備前焼を普段よりお手軽な値段で手に入れることができます。
さらに人間国宝に指定された名工の作品も入っている福袋の販売も!
陶器市のほかに特設ステージでのミニコンサートや電動ろくろを体験できる「ろくろチャレンジ」なども行われます。
全国から備前焼ファンが集まるこの機会に、ぜひあなたも備前焼を手に取ってみてはいかがでしょうか?
2023年第39回備前焼まつり 日時:2023年10月14日・15日 時間:9時から17時半まで(最終日は16時半まで) 場所:JR伊部駅(岡山駅から35分ほど)
生野高原オーベルジュKASSELのご紹介
生野高原オーベルジュKASSELは兵庫県朝来市の生野高原にあります。
当館は備前焼のコレクションの展示を行っております。
レストランでは地元の但馬牛にこだわったコース料理をご提供。
夏はさわやかな風と、冬は薪ストーブのあたたかさに包まれながらお食事をお楽しみいただけます。
今後は備前焼のお皿などでの提供、備前焼展示室の設置などを予定しております。
レストランのみのご利用も、ご宿泊と共にのご利用も可能です。
旬の食材にこだわった当館の料理を備前焼とともにお楽しみくださいませ。